◆脂質メディエータースフィンゴシン-1-リン酸の生理機能・病態生理機能に関する研究
当研究室では、1998年に、第二のプロスタグランディンと呼ばれる脂質メディエータースフィンゴシンー1-リン酸(S1P)の特異的Gタンパク共役型受容体S1P1
およびS1P2を同定し、その情報伝達経路と細胞レベルでの受容体サブタイプごとに異なる特異的な作用を解明した。現在、S1P受容体S1P1~3、その生成酵素sphingosine
kinase (SphK)、分解酵素S1P lyase
(SPL)、の動物個体における生理機能、病態(癌、動脈硬化、さまざまな血管障害、心肥大・線維化)における役割、治療への応用(虚血後血管新生や動脈硬化を標的とした創薬)を、KOマウスやトランスジェニックマウスを用いて研究している。
◆血管収縮の分子機構
当グループは、1990年代に、世界に先駆けて、低分子量GタンパクRhoがミオシンホスファターゼを抑制する結果、ミオシン軽鎖リン酸化レベルを増加させて収縮を増強すること(Ca2+感受性増加)を明らかにした。その後、2003年には、三量体GタンパクG12/13を介する経路とは別に、Ca2+がRhoを活性化することを発見した。2007年には、それまで哺乳類におけるその機能が不明であったホスファチジルイノシトール3-キナーゼ
クラスIIαアイソフォーム(PI3K-C2α)が、Ca2+によるRho活性化に必須であることを明らかにした。現在、この新しい血管平滑筋の細胞内情報伝達系PI3K-C2α-Rho-Rhoキナーゼ経路の上・下流の情報伝達のしくみ及び動物個体での正常血圧調節及び高血圧におけるPI3K-C2αの役割を、PI3K-C2αノックアウトマウスやトランスジェニックマウスを用いて解析している。
◆脂質リン酸化酵素PI3-キナーゼの生理機能・病態生理機能に関する研究
上記のクラスII PI3-キナーゼPI3K-C2αが、血管収縮以外のさまざまな血管機能および血管外の組織において、極めて重要な生理機能を有することを見出しており、現在ノックアウトマウスの解析を中心に解明に取り組んでいる。